高松地方裁判所 昭和54年(ヨ)24号 判決 1980年4月24日
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別紙当事者目録記載のとおり。
主文
一 本件申請を却下する。
二 訴訟費用は、債権者らの負担とする。
事実《省略》
理由
一債務者会社が昭和二八年七月二九日設立された、テレビ・ラジオ放送事業などを目的とする発行済株式総数二七万九〇〇〇株の株式会社であること、債権者宮脇紹亘及び同平井佐代子を除くその余の債権者らがそれぞれその主張する数の債務者会社の株式を所有していること、債権者宮脇紹亘及び同平井佐代子に対し債権者ら主張の仮処分決定がなされたこと、債権者仁之助が本件株主総会直前まで債務者会社の取締役であつたこと、及び昭和五四年一月一一日に開催された債務者会社の本件株主総会において債権者らの主張するような役員選任の決議があつたものとして、その旨の登記がなされたことはいずれも当事者間に争いがない。
二ところで、債権者らは、本件株主総会の決議不存在を主張するので、先ずこの点について判断する。
1 本件株主総会開催当時、債務者会社の株主及び取締役が仁之助派と卓志派に分かれて対立していたこと、その当時債務者会社の株式一万七、五〇〇株につき仮処分決定によつて議決権行使が停止されていたこと、仁之助派の議決権数が仮処分決定によつて議決権行使を許容された債権者宮脇紹亘と同平井佐代子の株式を含めると合計一二万八、四〇〇株となること、百十四銀行ほか八名がそれぞれ債権者ら主張の株式数を有していたところ、債務者中川以良を除くその余の右株主が債務者会社に議決権行使のための委任状を提出していたが、そのうち資生堂が本件株主総会当日委任状を撤回して総会に欠席することになつたこと、本件株主総会における議案が債権者ら主張のとおりであること及び債務者会社が本件株主総会の開催時刻を昭和五四年一月一一日午後二時と指定して招集通知を発していたことはいずれも当事者間に争いがない。
2 先ず、債権者らは、本件株主総会が午後二時から開会されるべきところ、定刻前に開会され定刻一分前頃には閉会されたとして右総会の決議不存在を主張する。
<証拠>を総合すると、債務者会社は本件株主総会を定刻から二分後の午後二時二分に開会し、同二時六分頃閉会した事実が疏明される。
尤もこの点に関して、<証拠>中には、本件株主総会が定刻前に終了したとの債権者らの主張に符合するような記載または供述がある。しかし、<証拠>によれば、同債権者は、定刻の一分位前に総会場に入場したとき、議長になつていた債務者卓志から総会を終了する旨の言葉を聞いたと供述しながら、その場で総会の終了時刻を実際に確認しておらず、また債務者会社側の者に対して本件株主総会が定刻前に終了したことにつきなんら抗議の姿勢を示していないこと、<証拠>によると、債権者渡辺澄雄は、債務者卓志の総会終了の宣言を聞き、直ちに二階の総会場から退場して仁之助派の株主らに対してその旨を告げた際、総会が終了したことだけを告げ本件株主総会が定刻前に終了したことについては少しも言及していないこと、また債権者らは、右渡辺から本件株主総会が終了したことを聞いても、誰一人としてその開催時刻に疑問を懐いて時刻を確認してはいないようであること、さらに証人平井滋高の証言(第一回)によつて右平井滋高が本件株主総会の受付状況及び総会終了後の紛糾の状態を録音したテープであると認められる疏検甲第一号証によつても、債権者らは、債務者会社の総務局長で総会運営の総括責任者である大西等及び受付案内係の松本弘一に対し本件株主総会が定刻以前に終了したことに異議を唱え、もしくはこれに抗議した事跡が窺われないこと、<証拠>によると、債権者林幸宏が本件株主総会当日の午後三時半頃作成し当日本件株主総会開催の時点に債務者会社に来ていた債権者仁之助ほか仁之助派の七名が署名している本件株主総会開催前後の頻末を記載した報告書(疏甲第九号証の七)には、本件株主総会が定刻以前に終了したことを非難する趣旨の記載はないこと、<証拠>によると、本件株主総会当日債権者らの代理人によつて作成された本件株主総会に関する証拠保全申立書は、証すべき事実は、本件株主総会が開催されなかつた事実としながらその申立の理由としては本件株主総会が定刻以前に終了したことは具体的に主張されておらず、仁之助派の株主を一階控室に待機させている間に、卓志派のみによつて総会が開会され、終了したことをもつて、証拠保全の事由としていることがそれぞれ疏明され、以上の事実を併せ考え、これと対比してみると、債権者らの主張に合致する前掲各証拠には不自然、不合理なところがあつてこれを直ちにそのまま信用することはできず、他に前認定に反する疏明は存在しない。
そうすると、本件株主総会は定刻後の午後二時二分に開会され、同二時六分頃閉会されたものと認めるべきものであるから、債権者らの前記主張は理由がないものというべきである。
3 次に、債権者らは、債務者会社が卓志派の株主らを定刻の四五分前に先に総会場に入場させながら、仁之助派の株主らに対する受付及び案内を故意に遅らせ右株主らの議決権行使の機会を奪つたことを理由に総会決議の不存在を主張するので、この点について判断する。
ところで、株主総会の決議不存在とは、総会の成立ないし決議の存在の事実そのものを欠く場合または総会そのものの成立ないしその決議というべきものが一応は存在しているが、その成立過程に著しい瑕疵があるため、法律上の意味における株主総会の成立ないしその決議としての存在が認められない場合をいうものと解すべきであるから、前記のように本件株主総会が定刻の二分後に開会された事実が疏明される以上、たとえ債権者らの右主張事実が認められるとしても、これをもつて法律上株主総会の成立ないしその決議の存在が認められない程の著しい瑕疵があるということばできず、債権者らの前記主張は後記のとおり総会決議の取消事由の判断の対象となり得るにすぎないものというべきである。
以上のとおりであるから本件株主総会における前記決議が不存在である旨の債権者らの主張は操用できない。
三次に、債権者らは、本件株主総会における前記決議にはこれを取消すべき瑕疵があると主張するので、判断する。
1 この点につき、債務者らは、債権者ら主張の取消事由は、債権者平井宏一に対する取締役会への招集不通知を、その理由とするもののほかは、いずれも商法第二四八条第一項所定の三か月の期間経過後に新たに追加主張されたもので許されない旨主張するので先ず右主張の当否につき検討する。
本件仮処分申請は、本件株主総会の日から三か月を経過しない昭和五四年二月一九日に申立てられたものであることは記録上明らかであるところ、債権者ら主張の取消事由のうち、申請の理由5(二)の(1)及び(四)記載の各主張は、要するに、債務者会社が仁之助派の株主らに対する受付及び案内を遅らせて議決権行使の機会を奪つたということに帰着し本件仮処分申請中において、既に主張されている取消事由の範囲を越えるものではなく、これを補充するものに過ぎないことが本件訴訟の経過上明らかである。しかし、その余の取消事由については、昭和五四年四月一一日提起された、本件仮処分申請事件の本案である当庁昭和五四年(ワ)第一三五号株主総会決議不存在確認等の訴において取消事由として主張されていないことは当裁判所に顕著な事実であり、本件仮処分事件の昭和五五年一月三一日の口頭弁論期日において陳述された同五四年一二月一八日受付の準備書面において始めて主張されもたのであることは本件記録上明らかである。
ところで、株主総会決議取消の訴は、商法第二四八条第一項により訴の提起期間は決議の日から三か月と制限されているが、これは取消事由に当たる瑕疵としても比較的軽微であり、たとえ瑕疵があるとしても、決議は取消されるまで一応有効なものとして取扱われ、右決議に従つた業務の執行がなされることからできるだけ早期に瑕疵のある決議の効力を明確ならしめるために設けられたものとみるべきである。もし訴の提起後においても随時取消事由を追加主張することを許せば、会社は取消が求められた決議につき取消されるかどうかの見通しを立てることが困難なため、決議の執行が不安定とならざるを得ないばかりか、とにかく訴を提起し、その後その理由を主張するという安易な態度を許すことになる虞れがある。そこで右期間は決議の瑕疵の主張そのものを制限したものとみるべきで、この期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないと解すべきである。
そうすると、債権者ら主張の取消事由のうち申請の理由5(一)の(1)(2)、(二)の(2)、(三)の(2)の各主張は前記本案において主張されておらず、しかも本件仮処分事件においては右期間を経過後に追加してなされたものであるから、許されないものといわざるを得ない。
2 そこで次に、申請の理由5(二)の(1)及び(四)記載の取消事由について判断するに、債権者らは、債務者会社が卓志派の株主らを定刻前に無条件で総会場に入場させながら、仁之助派の株主らに対しては一階の控室に誘導してここで待機させたり、前記仮処分決定によつて議決行使を許容された債権者宮脇紹亘及び同平井佐代子に対する受付を故意に遅延させたりして定刻寸前まで総会場に入場させないようにし、仁之助派の株主がようやく案内されて総会場に入場しようとすると、総会を終了させ、かくて仁之助派の株主らの議決権行使の機会を奪つたものである旨主張する。
そこで判断するに<証拠>を総合すると、次の事実が疏明される。
すなわち、本件株主総会当日、債務者会社では右総会開催に当り、経理部長の松本弘一ほか五名が株主の受付及び案内係を担当し、午後一時からその業務を始めたところ、卓志派のうち大部分の株主、役員らは、概ね午後一時四五分頃までに債務者会社の一階玄関付近に設けられた受付で、その手続を済ませて総会場に当てられていた二階の社長室に入場したが、一方債権者仁之助、同細川東平、同佐藤弘、同林幸宏、同中條安雄、同大眉久、同渡辺澄雄、同宮脇紹亘、同平井佐代子の九名は、いずれも定刻前に債務者会社に到着し、そのうち債権者大眉久は、当裁判所の仮処分決定によつて議決権行使を許容された債権者宮脇紹亘と同平井佐代子の総会出席を受付けてもらうべく、受付係の松本弘一に対し右事情説明に当つたが、その余の債権者らは案内係の案内に応じて株主控室に当てられていた一階応接室に入室し、あるいは一階のロビー付近にとどまつていた。受付係の右松本は、定刻のおよそ二分位前、本件株主総会の総括責任者であつた大西等から債権者宮脇紹亘と、同平井佐代子の受付をしてもよいこと、及び一階に待機中の右債権者らを総会場に案内するよう指示されたので、先ず債権者大眉久にその旨を告げてから受付付近や控室に待機していた債権者らに対し総会場へ入場するよう案内したが、右債権者らは容易にこれに応じようとせず、その後も受付係の右松本、労務部長の香川保などから総会場への入場を督促されながら定刻を過ぎても総会場に入場しようとしなかつた。そこで債務者会社では本件株主総会当日の出席株主が委任状による者も含めて一七名に達し、その持株総数も一三万二、一〇〇株に達していたので、仁之助派の株主らは欠席したものとみなし、債務者卓志が議長となり、既に認定したとおり定刻から二分経過した午後二時二分に総会を開会した。そしてその頃債権者渡辺澄雄が案内係の金子博美に従つて総会場に入場し、その後債権者仁之助らも総会場へ入場しようとして二階に至る階段を上がり始めたところ、先に総会場に入場していた債権者渡辺澄雄から総会が終了したことを聞かされたので総会場への入場を中止した。
以上の事実が認められる。
そして、債務者会社が、意図的に控室を設けて、仁之助派の株主らを同所に閉じ込め、もしくは、同派の株主らの受付手続を遅らせたと認めるに足りる証拠はない。
尤もこの点に関しては、<証拠>には、仁之助派の株主らが債務者会社の受付案内係から案内されて総会場に入ろうとしたときに総会が終了したとの記載があり、また証人平井滋高(第一回)、債権者渡辺澄雄、同大眉久及び同仁之助各本人もこれに副うような供述をしている。
そこで更に証拠関係を精査し、本件株主総会開催前後の背景事情を検討するに本件株主総会当日現在、債務者会社の発行済株式総数二七万九、〇〇〇株のうち一万七、五〇〇株が仮処分決定によつて議決権行使を停止されていたこと、仁之助派の議決権数が合計一二万八、四〇〇株であること、残りの一三万三、〇〇〇株のうち百十四銀行ほか八名が一万二、七〇〇株を有していたところ、そのうち債務者中川以良の二、〇〇〇株を除く一万〇、七〇〇株については委任状が提出されていたが、一、〇〇〇株を有する資生堂が、当日委任状を撤回して欠席することになつたことは前記のとおり当事者間に争いのないところであり、したがつて四、〇〇〇株を有する百十四銀行が既に提出にかかる委任状を撤回した場合には仁之助派の議決権数が卓志派のそれを上回る結果になることが明らかであつて、債権者平井宏一、同大眉久及び同仁之助各本人尋問の結果によると、債権者仁之助らは、本件株主総会の数日前から百十四銀行に対し委任状の撤回を働きかけ、本件株主総会当日も仁之助派は、午前中から高松市磨屋町所在の仁之助宅に集合して総会対策を検討、協議するかたわら債権者平井宏一が市内の右銀行本店に赴き定刻寸前まで同銀行の綾田整治会長にその説得を続けていたことが認められるのであつて、この事実に<証拠>によつて疏明される次の諸事実、すなわち債権者らは、本件株主総会の受付に際して債務者会社の受付係に面識のない株主や仮処分決定によつて議決権の行使を許容された債権者宮脇紹亘と同平井佐代子の受付をめぐつて紛糾が予測されたにもかかわらず、定刻近くになつて債務者会社に出頭していること、債権者大眉久は、債権者平井宏一ら四名の株主の仁之助宛の委任状を所持しており、これを債務者会社に提出する機会があつたにもかかわらず、右手続をしていないこと、仁之助派の株主らの中には、債権者渡辺澄雄や平井滋高のようにそれぞれ一人だけで総会場へ入場した者もいたこと、また債権者仁之助は、債務者会社の従来からの総会開催の実情からいつて、定刻になつても全株主が受付を完了して総会場に入場するまでは、総会が開会されることはないと判断していた事実を併せ考えると、債権者らは、同平井宏一が本件株主総会直前に至るも百十四銀行に対し委任状を撤回するよう説得を続けていた状況にあつたことから、同債権者からの、その結果についての連絡をひたすら待つていたため、定刻の前後に受付係の松本らから案内を受けても直ちにこれに応じて総会場に入場しようとしなかつたのではないかと推測されるのである。したがつて債権者らの主張に副う前掲各証拠はいずれも採用しがたい。尤も<証拠>中には同債権者は、定刻一分前に、債務者会社に出頭していた債権者中條安雄に対し百十四銀行が説得の結果委任状を撤回することになつた旨電話で連絡した旨の供述記載または供述が存するけれども、債権者渡辺澄雄本人尋問の結果によれば債権者平井宏一から同中條安雄に対する電話による連絡は、本件株主総会の終了直後になされていることが認められるものであつて、前記認定の右総会の終了時刻とを対比すると、右電話連絡がなされた時刻は午後二時六分頃になり、これは債権者平井宏一の右供述と矛盾し、さらに債権中條安雄が定刻一分前に債権者平井宏一から百十四銀行が委任状を撤回するとの連絡を受けていれば、即刻他の株主らにその旨知らせて総会場へ入場した筈であるのにかかわらず、<証拠>によると、債権者中條安雄は、右連絡を受けても直ちにその旨を仁之助派の他の株主らに知らせていないこと、また債権者仁之助本人尋問の結果によると、同債権者は、仁之助派の中心人物でありながら債務者会社において本件株主総会が、仁之助派の株主らが欠席のまま終了したことをめぐつて混乱が生じた後になつて、始めて百十四銀行の委任状が撤回されたことを知つた事実が疏明されることを考慮すれば、百十四銀行が果して委任状を撤回する意思を債権者平井宏一に表示するに至つたか否かについては疑問の余地がないでもないが、これは暫くおくとしても定刻一分前にその旨を連絡したとの債権者平井宏一の前記供述記載もしくは供述は、これを軽々に信用することができない。
以上の事実関係からすれば、本件株主総会のため債務者会社に来社した債権者らは、受付係から総会場へ入場するよう案内されたにもかかわらず、自らの意思ないしは判断に基づいて、定刻になつても敢て入場しなかつたと認めるのが相当である。
そうすると、本件株主総会の決議に、申請の理由5(二)の(1)及び(四)記載の取消事由が存在することを理由とする債権者らの主張は失当であると断ぜざるを得ない。
3 さらに、債権者らは、本件株主総会の招集を決議するための取締役会開催にあたり、取締役であつた債権者平井宏一に対して招集通知がなされなかつたので、右総会の招集手続には取消原因とされるべき瑕疵があると主張する。
思うに取締役会の招集につき、一部の取締役に対し通知を欠くときは右取締役会の決議は無効たるべきものではあるが、その取締役が出席しても右取締役会の決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情が存するときは、右決議は有効であると解するのが相当である。
今これを本件についてみるに、債権者平井宏一に対し本件株主総会招集のための取締役会開催の招集通知がなされていないことは当事者間に争いがないところ、仮に債権者ら主張のように右債権者平井宏一が債務者会社の取締役であつたとしても、前記争いのない事実に<証拠>を総合すると、債務者会社は、昭和五三年一二月二七日、本件株主総会の招集を決定するための取締役会を開催したが、その当時の取締役会は債権者平井宏一を別にすれば本件株主総会で選任された一四名と債権者仁之助、申請外平井滋高ほか三名の合計一九名で構成され、そのうち大多数の取締役は債務者卓志を支持するかまたは同人に好意を寄せており、既にその当時債務者会社の代表取締役を解任されていた債権者仁之助を支持する取締役は極めて少数であつたこと、そして右取締役会において、本件株主総会の議案として、債権者仁之助に対する金銭問題の処理などに関連した計算書類の承認の件、任期満了に伴う取締役などの選任の件等が少なくとも圧倒的多数をもつて決定されたこと、債権者仁之助は右取締役会に出席していたこと、債権者平井宏一は同仁之助の長男でかねがね同債権者と同じ意見をもち、行動を共にしていたこと、また右平井宏一は、その当時従前勤めていた債務者会社から解雇されており、同会社において影響力をそれ程有していなかつたことが疏明される。
右のような実態からすると仮に債権者平井宏一が右取締役会に出席したとしても、右取締役会の決議の結果になんら影響を及ぼすことはなかつたものというべく右取締役会の決議には、右債権者に対する招集通知の欠缺という瑕疵が存したにもかかわらず、これを有効なものと認めるべき特段の事情が存したというべきである。したがつて右取締役会の決議は有効であつて、債権者らの前記主張は採用できない。
四以上に認定判断したとおりであつて、本件仮処分申請は、債権者ら主張の本件株主総会の決議不存在及び取消事由について疏明はなく、結局被保全権利の存在について疏明がないことに帰し、かつ事案の性質上保証をもつてこれにかえることは相当でないと考えられるので、債権者らの本件仮処分申請は、その余の判断を俟つまでもなく、失当として却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(村上明雄 田中哲郎 打越康雄)
別紙(一) 当事者目録
(一) 債権者
債権者 平井仁之助
外一一名
右一二名代理人 河井信太郎
丸島秀夫
大内英男
三野秀富
城後慎也
債権者 平井佐代子
右代理人 鈴木竹雄
中島晧
二瓶修
城後慎也
(二) 債務者
債務者 平井卓志
同 西日本放送株式会社
右代表者 鈴木勉
外一五名
右一七名代理人 小川善吉
川井英良
小屋敏一
北原弘也
藤原晃
井上洋一
谷戸直久
近石勤
別紙(二) 職務代行者目録
取締役兼代表取締役職務代行者 松岡一章
取締役職務代行者 長谷部茂吉
入江菊之助
外三名